梅雨
2003年6月12日 近年は世界中の調子が不順なせいか、俳諧の季題で味わっていたような季節感が、年ごとに薄れていくのは味気ない。草木には多少遅速はあるとしても己れの花の出番は忘れず、降ったり照ったりの梅雨空の下で、何時もあるべき時に咲くものは咲いている。
紫陽花の季節
2003年6月6日立葵の花は入梅一ぱい裾から梢へと順々に咲きあがってゆく、梅の実の熟れて落ちるのもこのころなり、紫陽花の蹴鞠にも似た大きい花の枝もたわわに、水浅黄、うす紫、しとどにぬれて七色に染める花の色はあやしく美しい。
人間のもっとも哲学的な器官は顎である。
2003年6月1日 食物のフォルムについて。カマンベールチーズとオリーブ油、山羊、桜桃
真理のまことの味、固く噛み締めた骨の泉から表れれ出る赤裸々でやわらかな真理の味
ラファエロ的完全 パスカル的不安
真理のまことの味、固く噛み締めた骨の泉から表れれ出る赤裸々でやわらかな真理の味
ラファエロ的完全 パスカル的不安
葵の涙
2003年5月30日長い薄明のなかでびろうどの葵の震へてゐるやうに、
やはらかなふらんねるの手ざはりのやうに、
きんぽうげ色の草生から昼の光が消えかかるやうに、
ふわふわと飛んでいくたんぽぽの穂のやうに。
泣いてゐる。
泣いても泣いても涙はつきぬ。
やはらかなふらんねるの手ざはりのやうに、
きんぽうげ色の草生から昼の光が消えかかるやうに、
ふわふわと飛んでいくたんぽぽの穂のやうに。
泣いてゐる。
泣いても泣いても涙はつきぬ。
半島状
2003年5月21日 合田佐和子のオブジェ展へゆく。白い妖怪の美学。人魚と蛇ばかりの人形の夥しい群。指の先ほどの女体、蛇体の瓶詰め。初対面の彼女は髪の長い可憐な人。作品四点ばかり求める。郁哉からの電話で南画廊へ廻る。
模造人間
2003年5月15日 僕は普段、夜空を眺めることは余りありません。本物の星空よりも、プラネタリウムに映し出される星空のほうに強く心を惹かれるのです。ダイヤモンドよりも硝子玉、生身の人間よりもロボットが好き。
びいどろ
2003年5月14日 我は神秘を尊び、夢幻を歓び、そが腐乱したる頽唐の紅を慕ふ。我は、月光のもとにすすり泣く大理石の歎き也。人間の脳髄の色したる毒草の匂ひ深きためいきと、官能の魔睡の中に疲れ歌ふ鶯の哀愁もさることながら、仄かなる角笛の音に逃れる緋のびらうどの手触の棄て難さよ。
sukinamono.
2003年5月10日 好きなことはお能を見ること。和菓子でお抹茶(おうす)を頂くこと。シュークリーム。もちろんアイスクリーム。ヨットも大好きです。 『バウハウスと茶の湯』より
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